病院では、なかなか回復しなかった患者さんの症例です。
●更年期障害の経絡治療
●【更年期障害の東洋医学的考察】
●更年期は成熟期から老年期への移行期を言いますが、此の時期の身体の変化に伴って現れる症状が更年期障害です。
●更年期障害の症状は冷え・のぼせ等の逆気現象です。逆気は閉経により陰の気が不足して陰虚を生じ内部に虚熱を生じます。其の虚熱が上焦に昇り、逆気の症状が現れます。又、陰気の不足により陰陽が不調和となって陰陽の交流がうまくいかず、気血が滞って下焦が冷えてそれに伴った様々な症状(腰痛・足冷え・下腹痛・のぼせ・ウツなど)が現れます。
●普段は何とも思わない物事に対して、更年期の時期には癪に障ったりイライラしたり、思いつめたりするようになります。是は気血が滞り、陰陽の不調和のために情緒が不安定になるのではないかと思います。
●治療は病と身体の陰陽虚実を明らかにして治療方針を決めます。
●症例。
●50歳の主婦。主訴は膀胱炎として来院。
●現病歴。患者は膀胱炎として来院しましたが話を聞いてみると、発症したのは3年前で、この間消炎剤を服用など、膀胱炎の治療するも変化がない。又、其の他にも色々な症状があり、其の症状を見てみると更年期障害であろうと判断しました。
●其の症状は、膀胱炎様症状=膀胱が常に気持ち悪く、排尿時に痛い。その後も下腹部痛が持続して、内臓が出てくる感じがする。
●老人性膣炎(病院での診断)=膣が乾く感じで引きつる様に痛い。歩行や安静時、座位など姿勢に関係なく、車に乗って座るのも悪いためにどこにも行けない。散歩も行かない。
●喉が詰まる。夜中に苦しくなって飛び起きることがしばしばある。
●動悸がして脈拍(心拍数)が速く、心臓が悪いと思って検査をしたが心臓には異常なかった。
●左肩甲骨付近と鎖骨付近が痛く横になれない。(ホルモン剤を飲み始めたら痛くなった)
●その他に左偏頭痛。足が火照ったり冷えたりする。鼠径溝が痛む。胃が重く食欲がない。鼻炎で鼻汁が喉に落ちる。骨粗鬆症。等の症状があります。
●この間の病院での治療はホルモン剤、安定剤、消炎剤など服用し、膣にもホルモン軟膏を塗るが効果はない。
●既往歴。5年前に子宮癌の疑いで子宮摘出手術をした(癌ではなかった)。其の時卵巣もいらないだろうと言われ、卵巣も摘出して後悔している。
●脉診 脉状は?を帯びた虚脉(力がなく、滞った脉)。
●治療。これらの症状はそれぞれ個別の病気ではなく、更年期障害の症状としてのものであり、気血の流れをよくして身体のバランス(陰陽の調和)を整えれば自然治癒力が強くなり、必ず治ると説明して治療に入る。
●「腎脾相剋の証」という方法で治療を進めます。
●経過。2回目。前回治療後、膀胱は気持ちよく暖かい感じがあったと言う。鼻炎も調子がよく、良く眠れた。治療は前回同様、腎脾相剋。
●4回目。少しずつ良くなっているという。
●膣の痛みは大部軽減したが、又悪くなるようで不安だと言う。22日までホルモン剤を飲んでいたが其れ以後は飲んでいないと言う。
●6回目。常に気持ち悪かった膀胱は、排尿時だけ気持ち悪い。
下腹部痛は良好。
●8回目。調子が良かったので昨日セーターを洗濯できる程になった。
●13回目。調子が良く、庭の草取りをしたが、その後が少し不快であった。しかし最近は、「ダンスができるのではないかと希望がわいてきた」と言う。
●以後1年間の治療を継続し、現在は膣の痛みや排尿時の下腹痛はなくなった。長く歩いた時など、かなり疲れた時には不快に感じるが、普段は殆ど気にならなくなった。偏頭痛や喉の詰まり感もなくなった。体重は46kg 迄増えて、趣味のダンスも出来る程に回復しました。
●考察。
●普通、閉経は徐々に数ヶ月から数年にかけて進むものでありますが、此の患者さんは癌の疑いがあるということで、内生殖器を摘出されてしまい、人工的に閉経させられたものであります。
●其の閉経により陰気(水=腎の精気)が不足して陰虚となり、内熱を発して膣の乾燥をせしめて引きつるような痛みをおこした。又、内熱が上焦に昇って心臓に影響を与えて心拍が速くなったり、逆気現象である偏頭痛や喉の詰まり・肩こりを引き起こしたものであります。
●脉診流経絡治療で腎の精気が不足しているのを補い、陰陽の調和を整える事で、苦しんできた症状を回復させる事が出来ました。
●統合失調症(幻聴)
●統合失調症は現実との接触喪失(精神病性の症状)、幻覚(主に幻聴)、妄想、異常思考、感情の平板化(感情の幅が狭い)、意欲の欠乏、社会機能の低下などを特徴とする機能障害です。正確な原因は不明です。
●症状。陽性症状は妄想、幻覚、思考障害、奇異な行動。
●陰性症状は感性鈍麻、会話の貧困、快感消失、社会性喪失、思考障害(思考が支離滅裂、意味不明な会話)などです。
●症例
●36歳の女性。主訴は幻聴。
●問診 少しの幻聴はだいぶ前からあったが、1ヶ月位前からひどくなりいつも聞こえるようになった。
●人の声が頭の中に入ってくるような感じではっきりと聞こえる。意味もあり、時間に関係ない。病院で統合失調症と診断された。
●その他の症状としては、気分がだるい(気力がない)。月経不順(周期が乱れている)。不眠(途中に覚める)、目覚めが悪い。足が冷えると思うことがある。
●皮膚は全体が艶と力がない。本人は肩は凝らないというが、深部が硬く強張っており、肩背部も深部は硬く凝っている。足が冷えるというが他覚的には冷たくない。
●脉診 脉状は浮数虚やや硬い。
●治療 「脾腎相剋調整」の治療法。
●経過 2回目に来院し、幻聴は変化はないという。しかし声の調子や話し方が力と明るさがあり、表情もよく、脉状も前回より良く治療効果ありと感じた。治療は前回同様とした。
●3回目。前回治療後の夕方頃から幻聴は徐々に軽くなり、その後なくなった。また、悪いときは怖い夢を見ていたが、この頃みなくなった。食欲も出て太った。
●4回目。幻聴はしなくなった。気力は普通になった。生理不順も鍼をするようになって普通になった。脉の左右差もない。
●此の後も幻聴の再発はなく、月1〜2回のペースで現在も来院中です。
●考察 この患者さんの症状は陽性症状です。意外と早い段階でいい結果をだす事ができました。これは発症してからあまり経過しないうちに来院した事。その為に患者さんの体力がそれ程消耗していない状態であったからだと思います。
また、患者さん自身の治ろうとする前向きの気持ちも重要であります。
現在は再発防止のため、月に1〜2回通院しています。
●産後の体調不良
●女性にとって妊娠出産、更年期は病気ではなく生理的現象ですが、是が元で大きな病気を引き起こす事があります。
●症例
●患者 32歳の主婦。
●主訴 産後の体調不良。
●問診 今まで病気などした事がなかったが、妊娠中7ヶ月(9月)くらいから突発性頻拍症を発症した。
●息が上がって動けない状態になり、その後12月に帝王切開で出産したが、産後半年経った現在も体調不良が続いている。
●眩暈がして常にフワフワし、頭がボーッとしている。
●過呼吸になり、一人でいると怖く不安でイライラする。心療内科から処方されたパニック障害の薬を飲むと良いが、切れると過呼吸になる。
●首から腰にかけて凝った感じがする(特に右)。足が冷えて頭がボーっとする(逆気、産後特にひどくなった)。
●炊事など家事は何もできず、特に夕方以後は悪い。食事をするのもくたびれる。調子が悪いときは左半身に汗をかいて気持ち悪い。睡眠は安定剤を飲めば眠れる。手足の指関節が痛い。
●首、お腹や背部などの皮膚は緩んでいて、気血共に虚した(力がない)感じです。左下肢が右に比較して冷えています。下腹に帝王切開の大きな傷痕がある。全体的に力がなくて軟弱です。
●脉診 比較脉診は肺経・脾経・腎経が虚。「腎脾相剋」の証で陰陽調和を整える治療をする事としました。
●経過 2回目は5日後に来院した。前回後、気持ちは良かったが症状は変化なしと言う。
●3回目。症状はそれほど変化がないというが、脉状の虚脉や沈脉、皮膚の艶、表情など大部改善されている様なので、「本当にちっとも良くないですか?」と聞くと「少し良い」と言う。拇指間接は若干痛いが他の関節痛は良好。
●4回目。大部良好。大部長く起きていられるようになった。
●安定剤は飲まなくても不安感やイライラがなくなった。
●家事が少し出来るようになったが、その後がくたびれる。
●外出も少し出来るようになった。頭はまだスッキリしない。
●表情は大部明るくなった。脉状も大部良くなり、緩んでいた皮膚は引き締まって、全体的に力強さが出てきた。
●5回目。買い物など外出できるようになった。友達とカラオケに行ける程になった。
●8回目。朝が少し悪い程度で後は調子が良い。
●その後、7月に2回、8月に2回来院し、各種症状は家事の後疲れるが其の他は殆ど気にならなくなった。
●「子供が出来たのに調子の悪かった間が損をした感じがする」という。
●考察
●妊娠出産は病気ではなく生理的現象ですが、健康ともいえません。
一歩間違えれば重大な病気を引き起こします。
●妊娠によりホルモン分泌が変わり、身体の変調をおこすことがよくあると思います。更年期障害などもその例だと思います。
●此の患者さんの場合を東洋医学的に考えると、受胎(妊娠)により腎の気を労して気虚血虚をもたらし、このような症状を発症したものと思われます。
●長い間悩まされていた体調不良でしたが、割と経過は良好でありました。
●現代医学の病院ではそれぞれの症状に対して、個別に対応をしている為に半年経っても治りませんでした。
●東洋医学の、特に経絡治療では、多くの症状を統一的に観察し、証を立てて経絡調整することで治す事が出来ました。
●ムズムズ症候群
●ムズムズ症候群とは、主に下肢の部分に現れる事からムズムズ脚症候群と言われています。米国ではエクボン博士の名前をとり、エクボン症候群と呼ばれています。
●症状は「ムズムズする」「じっとしていられない」「痒い」「針で刺すような」「虫が這っているような」など様々で、「脚の中に手を突っ込んで掻き回したい」と表現する患者もいます。
●神経伝達物質であるドーパミンの機能低下や中枢神経における鉄分の不足による代謝の異常など言われていますが、正確な原因は、まだ解明されておらず、病院での治療法は無い様です。
●症例
●高校1年生のAさんは、四歳の頃から尾骨付近がムズムズするようになったそうです。じっとしている時や寝ようとする時が最も悪い。最近は授業中もムズムズする様になり、授業に集中できないと言って来院しました。
●病院ではわからず、薬を使用して以前は軽くなっていましたが、今は症状が増強する様になったと言います。
●その他の症状。年末にインフルエンザに罹り、その後食欲がなく、足が冷えて顔が火照る等の症状があります。
●脉診をしますと、脾経・肝経・腎経の経絡の不調和状態でしたので、
「肝虚脾虚相剋調整」という証で治療を進める事としました。
●長い間苦しみ、病院でも改善されなかったムズムズの症状ではありますが、経絡調整をして生命力の強化をする事でいい結果が出るものと思い治療に入りました。
●経過 2回目は一週間後に来院。
●初回の治療後、夜は主訴のムズムズは軽くなったという。昨日、マラソンがあり、右膝内側が痛いという。
●3回目。ムズムズの症状はだいぶ軽くはなったが、じっとしている時や授業中にまだある。
●4回目。昨日、授業中にちょっとあったが、その外は無かった。
膝の痛みは無くなった。顔の火照りは無くなった。
●5回目。ムズムズ症状は就寝中や授業中も殆ど無くなった。あったとしても気にならない程度だと言う。
●以上5回でムズムズの症状はなくなりました。その後、念の為に月2回来院し、七月で終了しました。
●考察
●このムズムズの症状は精神的ストレスにより発症したものと思います。この患者には二歳違いの妹がいます。
●今迄は周囲の目が自分にだけ向いていたのが、妹が出来たことで周囲の目が妹に向き、子供なりに疎外感などのストレスがあったものと思われます。
●子供でもストレスによる色々な症状があります。
例えば、今迄しなかったおねしょやおもらしをし、チック、吃音、円形脱毛症、そして喘息やアトピー性皮膚炎の症状悪化等様々な症状が出ます。こういったストレスに起因した症状は病院の薬では治りません。
●Aさんも長い間薬を服用し続ける事で却って悪化してしまったものでしょう。
●経絡を調整し、生命力を強化する事で、長い間苦しんできた症状を回復させる事が出来ました。
子育て中のお母さん方は、日常的に鍼をして体調を整えてあげましょう。
●便秘
●便秘は排便が3日以上無い、週に3回以下のもの、排便の困難さ、残便感、口腔からの便臭等で認識されるが、各人の排便間隔は体質や環境などによりまちまちで一意に決めることは出来ません。
●日本内科学会の定義では「3日以上排便が無い状態、又は毎日排便があっても残便感がある状態」となっています。便秘には、その原因から問題のある便秘と、そうでないものがありますので、病院での検査をする事も大事です。
●最近は職場や学校での排便を嫌い、我慢する人が多いそうです。
●症例
●主訴 便秘。
●問診 便秘の会社員Bさん。便通は週1回でコロコロした便だそうです。元々便秘性であるが、朝に便意はある事もあるが、出勤と子供の幼稚園の準備で忙しく、トイレに行く時間がとれないことが度々ある。
食欲不振。胃もたれで腹が張った感じであると言います。
●冷えて寒がりである。平熱は低く36度くらいである。(以前は35度代だった)。低血圧だが朝は弱くは無い。鼻が赤くなる。手や足は冷たく冷えている。健康には気をつけており、五分搗きのご飯を食べ、肉や乳製品は摂らないようにしているそうです。
●脉診 脉状診は沈・遅にして虚(冷えの脉)。比較脉診 肺経・脾経・腎経の経絡が不調和状態で、その陽経が実。
●治療 「腎脾相剋」という証で治療を進める事にしました。
右復溜穴と経渠穴を補い、検脉の後、左太白穴を補うと、陰陽の調和のとれた脉になりましたので、初回の治療を終わりました。
●経過 2回目は一週間後に来院した。前回の治療後、週2回あったがコロコロだった。胃もたれは少しある。
●3回目。一週間には3回通じがあった。コロコロだったのが普通の形になったと言います。胃もたれが無くなり空腹感があるようになった。
●5回目。週3回の便通があった。冷えは大部良くなった。職場の同僚に「この頃寒がらないね」といわれた。
●8回目。普通の形で3回あるようになった。
●その後、週3〜4回あるようになった。便意はあっても朝、出勤と子供の幼稚園の準備で忙しく、トイレの時間が取れないので我慢することが度々あるが、普通の形で排便が楽になった。
●考察 Bさんの脉は「沈遅にして虚」ですから冷えです。
●身体の冷え、特に腰・下腹部から下(下焦)の冷えは女性に多くみられます。下焦に気血が不足して冷え、便秘に繋がったものと思われます。
●また、朝の忙しさで我慢する事で慢性化したものと思います。
経絡治療で陰陽調和を図り、全身に気血を巡らすことで頑固な便秘が改善されました。
●ストレスによる生理不順
●女性は通常であれば、10〜15歳の思春期に初潮がありますが、思春期を迎えても月経が始まらないものを原発性無月経、思春期に始まってもその後止まったもの(3ヶ月以上)を続発性無月経と呼びます。
●精神的悩みやストレスから続発性無月経が起こります。ストレスは脳がホルモンの分泌によって行う卵巣機能のコントロールに影響を及ぼします。
●また、過度な運動や極端な少食(無理なダイエット・拒食症)による体重減少なども無月経の原因となります。
●症例
●患者 33歳の未婚女性。職業は会社員。
●主訴 無月経(生理不順として来院した)。
●問診 仕事はかなりきつく、帰宅はいつも11時頃になり、お客や仕事仲間などに気苦労が多く疲れている。主訴の生理不順(無月経)は六ヶ月間全くないという。
●元々不順で遅れることはあっても、今回のように全く無いのは始めてだそうです。病院での検査は異常がなく、薬(ホルモン剤など)は服用していない。
●他にアトピーが首や顔に出て痒い。秋頃になると喘息が出る。手足が冷え、冬は手指に霜焼けができる。暖房すると顔が火照る。低血圧で体温が低い等の症状があります。皮膚全体が荒れており、アトピーの湿疹がでている。前腕の肺経・心包経と下腿の肝経と腎経が虚(力のない状態)している。
●脉診 比較脉診では肝経・腎経・肺経が虚で、不調和状態の脉です。
●証決定 「肝虚肺虚相剋調整」という証で治療を進める事にしました。
●治療 患者の症状は血虚(血の循環が不足状態)であり陰虚証であるので、陰経を充分補って陰陽の調和を図り、血を潤す事を目的に治療を進める。また、患者は大部過敏であり、施術には細心の注意をして行う。
●治療後、帰り際に患者は「身体がポカポカする、特に下腹部が温かくなった」という。
●経過 2回目、前回後、特に異常なし。治療は前回と同様、肝肺相剋である。
●3回目、アトピーの痒みが大部よく、いい感じである。気持ちが上向きになったという。
●また前日飲み会があったが翌日の体調は良好であった(今迄は飲み会の翌日は体調不良で起き上がれなかった)。
●週1回の治療を継続して8回目迄2ヶ月、アトピーの痒みや皮膚の湿疹の状態、全体の体調は良好で回復傾向にある
●11回目の翌日に生理があったという。今迄は生理痛が激しかったが今回はなかった。去年の夏は汗をかかなかったが、今年の夏は汗をかくようになって冷房せずにすんでいる。
●その後、週一回の治療を継続した。6、7、8月に生理は間隔が不定期であった。その後は毎月順調に来るようになった。
●この秋は喘息はでなかった。霜焼けができなくなった。などの症状が改善された。
●また、久しぶりに会った知人などから「きれいになった」等といわれたと喜んでいた。
●仕事は相変わらず帰りが遅く、ストレスもあるためにしばらくは週一回の鍼治療を継続するようにした。
●3月迄一年間継続して終了し、現在は疲れた時に来院している。
●考察
●『杉山流三部書』という鍼の書物に「……女は十四なる時、月水行り、(中略)…故に女は先ず月水調ふ、月水調ふれば万病生ぜず…」とあります。「月水」とは月経の事ですが、それ程女性にとって月経は重要です。
●東洋医学(経絡治療)では「内傷なければ外邪入らず」が病因論の基本でありますが、この患者はハードな仕事と人間関係によるストレスが内傷となって陰陽の不調和をおこしたものです。陰陽の不調和が血虚をおこして無月経となり、陰虚証の内熱がアトピー症状を悪化させたものと思われます。
●長い間、生理のない状態が続いていましたが、陰経を充分補って陰陽の調和を図り、血を潤す事を目的に治療を進めて回復させる事が出来ました。
●この症例に限らずストレスが原因の病気が増えてきています。
●経絡治療では、内因であるストレスにより不調和となった陰陽虚実を補瀉調整することで回復に導くことができます。
●小児の頭痛(子供さんの治療は?鍼という刺さない器具を使用)
●1例目
●患者は小学6年の女子。小柄な子。主訴は頭痛。
●問診 頭痛は5月頃から始まった。その頃は週1回位、週の始めの月曜又は火曜日に痛かったが、最近はだんだん回数が増え、週3〜4回は痛くなる。朝5時くらいに痛くなり、嘔吐する。薬を飲んで一眠りして8時頃になると楽になり、あわてて学校に行くということを繰り返す。又、日中も度々痛くなる。日曜日は痛くない。
●頭痛の前駆症状として視界に閃輝性の光が見える。又、目の奥がいたいことがある。たまに生理痛として下腹部が痛い。便通は硬い。
●脉診 脉状は浮数虚で硬い。比較脉診は肺経と脾経 肝経が虚、その陽経が実。以上総合判断して肺肝相剋の治療法とした。
●治療 右太淵穴と太白穴、右の太衝穴を補う。陽経は光明穴・豊隆穴・遍歴穴に補中の瀉法を施した。肩背部に接触診を施して治療を終了した。
●経過 いつも月曜日に必ず悪かったが鍼のあとは良かった。水曜日に痛かったが痛みは軽く、ムカムカはしたが嘔吐はなかった。治療は前回同様肺肝相剋。2回目終了後は木曜日の朝に痛かっただけという。
●その後、週1回の治療を7回継続で回復した。
●2例目
●患者は小学6年生で声は小さく、優しい喋り方の女性。身長は160cmで痩せ型。
●主訴は頭痛として祖母に連れられて来院した。
●問診 5年生の終わりころから頭痛がするようになった。来院時こめかみと後頭部がずきずきする。生理は4年生の始めから始まったが、生理中は特に頭痛が激しく、腹も痛い(臍の周囲)。
●手足が冷たく、暖かい部屋などではほっぺが赤くなる。毎年冬は足指に霜焼けができる。また、足が冷たい為に寝つきが悪い。皮膚全体に艶がない。手指、足指は冷たく汗をかいている。首の周囲や肩背部が強張り凝っている。
●脉診 脉状は沈にして虚(冷えの脉)。
以上から肝虚脾虚相剋調整の治療法と決定した。
●治療 右曲泉穴、陰谷穴、左陰稜泉穴に補法。その陽経の左光明穴飛陽穴、右豊隆に枯に応ずる補中の瀉法。肩背腰部に接触鍼を施して治療を終了した。
●2回目、2週間後に来院。頭痛がするときだけに来院するようなので体質改善をしたいと治らない、最低毎週来るように説明した。前回の治療後、帰宅後頭痛は改善したが、また今週痛くなったので来院したと言う。症状は前回と同様である。治療も前回と同様とした。
●3回目。治療後、体が温かくなった感じがするという。
●その後、週1回の治療を2ヶ月間10回の継続でほぼ頭痛はなくなった。足指の霜焼けも今年はできなかった。冷えは残っている。
●その後疲れると痛くなり、来院している。
●考察
●頭痛には偏頭痛や緊張性頭痛・群発性頭痛や他の病気の症状として現れるもの(高血圧に伴って起きるものや緑内障など眼の病気、副鼻腔炎、蜘蛛膜下出血など)色々ありますが、経絡治療は変動経絡の虚実を補瀉調整します。
●1例目は病名で言えば偏頭痛です。2例目は冷えと生理(月経)に関係した逆気性の頭痛です。
●2例とも症状は余りこじれてなく、割と早い段階で結果が出せました。
小学生の初潮が始まるこの時期は体質的にも変化する時期で、余りこじれていないうちに体質改善することは大事なことであります
大事なことは痛い時だけに来院するのではなく、痛くならない様に体質改善する為に、定期的に来院する事です。
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